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内歯転造盤

緒言

 平成21年度の塑性加工学会技術開発賞(中小企業)を受賞した「新開発ヘリカルインターナル歯車の転造成形」技術は直ちに量産歯車が世にでるほどには成熟していなかった。

 本転造盤による内歯車の転造を説明する。第3図に示すコンテナに素材を整合挿入してその内側から工具歯車を押し当てコンテナ内側との挟圧によって工具歯車の歯形部を素材の内側に転写することで内歯車を成形するのであるが、予め歯数に相当する溝が加工されていない場合は工具歯車の回転にコンテナが自由に従動するだけでは所定の歯数を正確に転写するにはかなりタイトな条件設定に基づく歯数設定用工具が必要であった。

 また、この点を克服し一見美しく出来上がったかに見える歯車も、歯溝の分配精度に関し辻褄あわせの行われた箇所(特異点と称している)は最終最後まで歯車精度の特異点として残り、歯車精度の等級を落としている。この点の改良がその後の最大のテーマであった。

ヘリカルインターナル歯車の転造成形と転造盤の進歩

 受賞対象となった転造盤(1)はその後少し進化して現在は図1に示すごとくコンテナ回転に関して完全な従動自由な状態からその回転情報のモニターが可能な仕様に発展している。タイミングベルトを介しているのでその回転角保持剛性には限界があるが一定回転方向での回転角保持機能は充分である。完全に平滑な内径の素材に正確に歯溝を刻み所定の歯数を得るための手段を説明する。

 第3図に示すごとく、素材内側に工具歯車を押圧しながら工具歯車をある回転範囲内を往復させる。この間の工具とコンテナの回転比が所望の歯数比に正確に一致するところまでX軸を進めてゆく。

第1図、コンテナ回転制御付き内歯車転造盤
第2図、コンテナ部外観
第3図、歯車創歯転造の解説

 もちろんこの作業にもある程度相応しい粗工具歯車は必要であるが全く自由に従動している状態での割出しと比べればその必要性は雲泥の差である。こうして、理論比に一致した回転比を保ちながら転写領域を拡大して行き最終的に全周に歯形を転写する。

 予め定められたX軸位置まで転写を推進していくのでなく、素材内径などの微小とはいえ避け難いバラツキを吸収して、結果として正確な歯溝の配置を達成する。

 この場合のキーポイントは加工中に回転比を把握することにある。こうして、理論比に一致した回転比を保ちながら転写領域を拡大して行き最終的に全周に正確な歯溝を成形する。

関係する新たな所見

 この回転比のモニターは別の所見をオープンにした。過去にスパーギアの転造はヘリカルギアにないぎこちなさを感じていたがこの回転比を微視すると契合回転の一歯ごとに従動側の遅速が見え回転速度を上げた場合の振動発生と関係している様である。最近ある諸元のスパーギアの転造で工具歯車がひと歯欠損の事故を発生したがこの現象も同根ではなかろうかと考えているが本稿で述べる技術により初期に正確な歯溝の分配がなしえればスパーギアの転造にも活路を見出せるかも知れない。

本転造盤の活用方向

 現在、ヘリカル歯車の転造成形は勿論であるがそれ以外にもこの新しい転造盤の活躍場所としてチャレンジされている分野は少なくない。多板クラッチのドラム、シンクロスリーブ、など内周に凹凸が存在するアイテムは少なくない。需要家各社の情報の壁は高くはあるが漏れ聞こえるアイテムは確実に増加している。

 弊社が独自に開発しているのは内ネジの転造加工である。その試作サンプルを第4図に、使用した工具を第5図に示す。この加工は本転造盤の工具軸回転とコンテナ回転の相対回転角を強固に同一角に保持するロジックを作り工具のピッチと加工品のピッチを合わせて素材内径に転写せしめた結果成功したものである。同一の工具で大小2種類の内ネジが成形出来ているのは工具軸の公転半径を変えることでネジ径を成形している新しい工法を証明している。

 本内ネジ工法の要点とする工具軸とコンテナ軸の相対回転角を強固に同一角に保持するということは工具軸もコンテナ軸も個々にはまったく回転の必要がないということなので、現在、工具軸もコンテナも回転しないX-Yテーブルが円弧運動をするだけの廉価版内ネジ転造機を試作中である。近々発売する新しい転造機は新しい機械を生み出そうとしている。新開発ヘリカルインターナル歯車の転造盤が文字通りであれば歯車以外に適応するはずがないが歯車も出来る新しい加工機と認識し、更に加工途中の情報を取り入れた運転ロジックを生み出せれば活用アイテムは無数に存在するように思われる。

 この内ネジ成形機は近々の内に公開する。その解説を期待してください。

第4図、同一工具で転造成形した内ネジ
第5図、ネジ転造工具

製造・販売

製造元

エヌ.エッチ.ケー.ビルダー株式会社 http://www.nhk-builder.co.jp

販売元

アムデックス株式会社 http://www.amdex.co.jp

発表資料

塑性と加工 第50巻 第587号「新開発転造盤によるヘリカルインターナル歯車の成形」(2009/12)
素形材 第52巻「新開発転造盤によるヘリカルインターナルギヤの成形」(2011/11)
塑性加工学会 「新開発インターナル歯車の転造盤と演算運転サーボプレス」(2012/9)